ハングルとは

     韓民族が誇る偉大なる文字 ハングル

  

 韓国・朝鮮語を表す文字を「ハングル」といいます。 この文字は1443年、朝鮮王朝・第4代の王様、世宗大王により作られ、何度か変遷しながら今に至っています。

 その時まで韓国 (以下、韓民族全体を韓国と言うことにします)には固有の文字がありませんでした。それで中国の文字である漢字を使い、漢文(古代の中国語)で表現するか、漢字を借りてその音と意味をとって韓国語を記したり(これを吏読[りとう]と言う)していました。しかし吏読は韓国語をその音のまま記すことが難しく、漢字は数も多く 、一般庶民が学ぶのにはとても大変でした。それで韓国語を正しく記すことができて、誰でも易しく学ぶことができる文字が何よりも必要でした。 

 

  世宗大王(세종대왕)

  ハングル創製以外にも天

 文観測器製作、朝鮮通宝 

 貨幣制の創設、また農業、

 医学に関する書物を多く刊

 行し、そのための活版印刷

 の技術も大きく発展させた

 世宗はまず、成三問、申叔舟、鄭麟趾のような学者たちに文字を研究してつくるよう命じられました。一方、使者たちを中国(明)に送りそちらの学者の意見も参考にされました。こうして多くの人を動かし長い研究を重ねた後にはじめてハングルが完成したのです(1443年)。 しかしすぐ発表することはせず、宮廷に諺文庁(諺文とはハングルのこと)という官庁をおいて、新しく創った文字が実際に使用するのに適当であるか諮問しました。 そして1446年に新しく作った文字を

「訓民正音」として公布しました。(右図)

 

 

 

 その際に刊行された本が『訓民正音』(文字の名前と本のタイトルが同じ)です。『訓民正音』は「例義」編と「解例」編で構成されています。例義編は世宗大王自ら文字を創製した目的が書かれています。また解例編には「訓民正音」を研究した9人の臣下により文字の原理や子音・母音の発音方法などが詳しく叙述されています。解例編は長く存在が確認されていませんでしたが、1940年に慶尚北道の安東という所で発見されました。 『訓民正音』 は1997年に世界記録文化遺産に登録されました。

 ところで当時、韓国の人たちの中にはハングルに反対する人もいました。長い間中国に従ってきたので、中国と異なった文字を作るのは良くないということと、またハングルを使えば漢字を習う人が次第に減ると思い反対をしたのです。それに対し世宗は、そのような反対を無条件に退けることはしませんでした。ハングルがどんなに良い文字であり、これを使うのがどんなに必要なことかを教えるために多くの本を刊行しました。 また臣下に命じてハ ングルで”龍飛御天歌”(右上写真)という歌を作ったり、”月印千江之曲”(右下写真)という歌を自ら作ることもされました。また漢文でできた多くの文章をハングルに書き換えたりしました。

 

    ハングルによる

        「龍飛御天歌」 

     

  世宗大王による

  「月印千江之曲」

 

        ハングル表 (半切表、가나다라表などとも言う)

 

a

ya

eo

yeo

o

yo

u

yu

eu

i

k/g

  가

n

t/d

r/l

m

p/b

s

 

ch/g

ch

k

t

p

h

         

              

                    ハングルに対する評価

 

1990年半ば、言語学研究で権威のあるイギリスのオクスフォード大学の言語学科で、合理性、科学性、独創性などを基準に30種類の文字を評価した結果、ハングルがトップになりました。ユネスコでは1989年に「世宗王識字賞(King Sejong Literacy Prize)」を創設し、人類の文盲率低下に貢献した団体または個人を選び授与しています。オランダの言語学者、ハワード・フォス(Howard F.Vos)は「ハングルこそ世界で最も素晴らしいアルファベットである」と主張しました。またイギリスの言語学者、ゴフリー(Geoffrey Sampson)は、「文字体系(Writing System)」という本で、「ハングルは人類が作った最も偉大な知的産物の一つであることに疑いの余地がない」と述べました。